産業用ARMボードの選び方2026:SoC・インターフェース・長期供給と技適・PSE

産業用ARMボードは、まず画面の大きさとグラフィックス、必要なシリアルやCANの本数、動作温度から候補を絞り、次にOSと長期供給の約束を確認します。日本で無線付きの機器を使うなら技適マーク、ACアダプタを同梱するならPSEマークも必須です。

本ガイドは、2012年創業で産業用ディスプレイ、組込みボード、HMIパネル、産業用ゲートウェイ、エッジAIコンピュータを設計・製造するBeijing Huamei Xuntong Technology Co., Ltd. (TouchVision)のエンジニアリングチームが執筆しました。

要点まとめ

  • 産業用ARMボードは広温度・連続運転・長期供給を前提に選びます。
  • SoCは画面とアプリの重さで決め、評価ボードで試作アプリを動かして確認します。
  • LVDS/eDP、RS-485、CAN、無線の有無は後から足せないため最初に確定させます。
  • 無線搭載なら技適マーク、ACアダプタ同梱なら◇PSEマークの確認が必要です。
  • BSPとOSイメージを誰が何年保守するかを契約前に確認しましょう。

産業用ARMボードとは?汎用ボードとの違い

産業用ARMボードは、ARMプロセッサ(SoC)を中心に、表示出力・シリアル通信・電源回路を産業機器向けに作り込んだ組込みボードで、広い動作温度、長時間連続運転、長期供給を前提に設計されています。ホビー向けのシングルボードコンピュータと見た目は似ていても、部品選定と供給体制がまったく違います。

典型的な用途は、HMI・操作パネル、EV充電器、計量器、医療・分析装置、自動販売機、エネルギー管理機器などです。製品寿命が10年を超える装置では、途中で基板が入手できなくなると再設計と再認証のコストが発生するため、性能より「同じボードを何年買えるか」が重要になることも少なくありません。

TouchVision TV-RK3568 産業用ARMボード
TV-RK3568:Cortex-A55×4、デュアルLVDS、RS-485×5、CAN、-20~+85 °C動作の産業用ARMボード。

SoCはどう選ぶ?用途別の比較

SoCは「画面とアプリの重さ」で決めるのが近道です。豊かなGUIやAndroidならCortex-A55クラス、リアルタイム制御やAI推論を併用するならi.MX 8M、シンプルなHMIなら低消費電力のCortex-A8やARM9で十分です。

SoC(コア)得意な用途主なポイント
Rockchip RK3568(Cortex-A55×4、2.0 GHz)大型HMI、マルチディスプレイ、Android端末Mali-G52 GPU、デュアルLVDS、HDMI 4K、PCIe 3.0
NXP i.MX 8M(Cortex-A53×4+Cortex-M4)制御とGUIの両立、エッジAIM4コアでリアルタイム処理、NPU搭載
TI Sitara AM3354(Cortex-A8)長期稼働のHMI、計量・制御低消費電力、ファンレス、長期供給の実績
Nuvoton NUC972(ARM9、300 MHz)低コストのシンプルなHMIAES/SHA/3DESのハードウェア暗号
Rockchip RK3308(Cortex-A35×4)音声・IoT端末、制御ボックスオーディオコーデック、Wi-Fi/4G

迷ったときは、実際の画面サイズと解像度、起動時間の目標、同時に動かすプロセス(GUI、通信、データ記録)を書き出し、評価ボードで試作アプリを動かして確かめるのが確実です。

表示・通信インターフェースで確認すべき点は?

インターフェースは「後から足せない」ため、LVDS・eDP・HDMIなどの表示出力、RS-485とCANの本数、Ethernet、無線の有無を最初に確定させます。

  • 表示:産業用液晶はLVDSやeDP接続が主流です。デュアルLVDSなら1920×1080クラスのパネルにも対応できます。
  • シリアル:RS-485はModbus RTUで電力量計、インバータ、PLCとつなぐ定番です。必要本数と絶縁の要否を確認します。
  • CAN:EV充電器、建機、医療機器の内部通信で使われます。
  • 無線:Wi-Fi、Bluetooth、4Gを載せると、日本では技適の確認が必要になります(後述)。

動作温度・電源・長期供給はどう評価する?

動作温度は筐体内部の温度で考え、-20~+85 °Cクラスの広温度範囲を基本にします。電源は24 V系の盤内電源にそのまま接続できるか、長期供給は年数と製造中止の通知方法まで確認します。

密閉された盤や屋外筐体では、周囲温度より20 °C以上高くなることもあります。ファンレス運用を前提にするなら、SoCの発熱と放熱経路も評価対象です。基板品質では層数や表面処理(ENIGなど)、コネクタの固定方法、ウォッチドッグの有無が長期信頼性を左右します。供給面では、主要部品のEOL情報をどう共有してくれるか、BSPやOSイメージの保守を何年続けるかを契約前に確認しましょう。

OSとソフトウェア(Linux・Android)はどう選ぶ?

専用装置ならLinux+Qt、タブレットのような操作感やアプリ資産を活かしたいならAndroid、決定的な応答が必要ならRT-LinuxやM4コアの併用が基本の選択肢です。

大切なのは、カーネルとドライバを含むBSPを誰が保守するかです。Ubuntu 20.04やDebian 10といった既存バージョンのサポート期限、セキュリティ更新の方法、量産時のイメージ書き込み手順まで確認しておくと、出荷後のトラブルを減らせます。

日本で使うときの技適マークとPSEマークの注意点は?

Wi-Fi・Bluetooth・4Gなどの無線を搭載したボードを日本で使うには技適マーク(技術基準適合証明等)が必要で、ACアダプタなどの直流電源装置を同梱して販売するならPSEマークの対象になります。

総務省の技適マークに関するQ&Aによると、技適マークのない無線機を使用すると電波法違反になるおそれがあり、また技適を取得した機器でも改造すると適合は無効になります。認証済みの無線モジュールを組み込む場合も、表示の方法やアンテナの条件を事前に確認してください。

電気用品安全法(PSE)では、定格容量1 kVA以下の直流電源装置(ACアダプタなど)は特定電気用品に該当し、◇PSEマークの表示が求められます。製造・輸入事業者は事業開始の日から30日以内の届出や技術基準への適合、登録検査機関による適合性検査などの義務を負い、マークのない電気用品は販売できません。DC 12 V/24 Vで動作するボード単体は一般に対象外ですが、電源とのセット販売では扱いが変わるため、表示内容は経済産業省の表示ルールで確認しましょう。

TouchVisionの産業用ARMボードはどれを選ぶ?

TouchVisionは、RK3568、i.MX 8M、AM3354、NUC972、RK3308を搭載した産業用ARMボードを揃え、用途に合わせてインターフェースやOSイメージをカスタマイズできます。

  • TV-RK3568:Cortex-A55×4(2.0 GHz)、Mali-G52、デュアルLVDS、HDMI 4K×2、eDP、RS-485×5、CAN、Wi-Fi/Bluetooth 5.0、PCIe 3.0。Android 10、Ubuntu、Debian、RT-Linuxに対応し、-20~+85 °Cで動作します。
  • TV-i.MX8M:Cortex-A53×4(1.5 GHz)+M4、2.3 TOPSのNPU、24 V入力、Linux 5.4+Qt 5.15、8層ENIG基板。
  • TV-AM3354:Cortex-A8、RS-485×5、ウォッチドッグ、24 V入力、-20~+85 °C。長期稼働のHMI向けの定番です。
  • TV-NUC972(ARM9 300 MHz、ハードウェア暗号)とTV-RK3308(Cortex-A35×4、オーディオ、Wi-Fi/4G、-20~+80 °C)は、低コストの制御・IoT端末向けです。

TouchVisionについて TouchVisionは2012年から、産業用タッチディスプレイ、組込みボード、パネルPC、IoTゲートウェイ、エッジAIコンピュータを、標準品からOEM/ODM案件まで設計・製造しています。標準品には納品日から3年間の保証が付きます。カスタム開発についてはTouchVision OEM/ODMサイトの産業用マザーボードのカスタム設計、または会社概要をご覧ください。

よくあるご質問

産業用ARMボードとラズベリーパイの違いは何ですか?

産業用ARMボードは広い動作温度、RS-485やCANなどの産業用インターフェース、長期供給と保守を前提に設計されています。試作には汎用ボードも便利ですが、量産装置では供給期間と品質が重要です。

RK3568とi.MX 8Mはどちらがよいですか?

大きな画面や複数ディスプレイ、Androidを使うならRK3568、リアルタイム制御とGUIを1枚で両立したい場合やNPUを使う場合はi.MX 8Mが向いています。

無線モジュール搭載ボードを日本で使うには何が必要ですか?

技適マーク(技術基準適合証明等)が必要です。技適のない無線機の使用は電波法違反になるおそれがあり、改造すると適合は無効になります。

ボードにPSEマークは必要ですか?

DC電源で動くボード単体は一般に電気用品安全法の対象外ですが、ACアダプタ(直流電源装置)は特定電気用品で、◇PSEマークが必要です。セット販売の場合は特に注意してください。

小ロットのカスタマイズは可能ですか?

はい。TouchVisionはインターフェース、筐体・取付方法、OSイメージ、ブランディングをカスタマイズでき、小ロットの試作注文にも対応しています。

参考資料・法令

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